どんぐり便り

家のそばにどんぐりの大きな木が二本あり、年々枝を伸ばして大きくなる。
雨が降るたびに緑が濃くなるこの時期には、窓から手を伸ばせば枝先に届きそうな気がする程近くに見える。
ここに住み始めた頃、夜にカブト虫が飛んできて窓をたたき、子どもと一緒に思いがけない訪問者に喜んだ事がある。
その頃は、どんぐりの木からやって来たのだろうと想像するだけの、隣家の屋根越しに少し見える程の大きさだったのだが、何と大きく育ったことだろう。

しかしここ数年カブト虫は飛んで来なくなった。
代わりにカラスの大合唱。
木が大きくなり、カラスの繁殖に最適の場所になってしまったようだ。
毎年、まだ寒い時期なのにカラスの夫婦が口に何か銜えて、せっせとどんぐりの幹の中ほどを行き来しだし、暖かくなる頃しゃがれた鳴き声を早朝から響かせる。
たぶんカブト虫の幼虫はカラスの最高の栄養食になっているのだろう。

この二本のどんぐりの木はカラスだけでなく、様々な鳥達の羽休めの場所にもなっているらしい。
春は北へ渡る鳥達の群れがさえずり飛び交う。
珍しい鳴き声を聞き、あわてて図鑑をとりだしてもさっぱり判らない事も多い。
高い鳴き声の、太さや大きさから姿を想像して楽しんでいるが、後に判明した鳥は、鳴き声から想像していたより、地味な色合いをしている事が多い。
ガッカリはしないが、鳴き声は繊細で美しいということなのかな。

このどんぐりの木もいつか倒される日が来るのだろうが、ただ今は、日々色を変え、様々な生き物たちの棲家として大きく立っている。

大きな木